再婚パートナーと実子、両方を守りたい – 家族信託で実現した「二段階相続」

年齢
50代
職業
会社員
Background
ご依頼の経緯
一度離婚を経験され、現在は入籍していない新しいパートナーの方と同居されている状況でした。将来のことを考えた時に、「パートナーには自分が亡くなった後も安心して自宅に住み続けて欲しい」という思いと、「最終的には実子に不動産を残してあげたい」という両方の願いを持っていました。
しかし、入籍していないパートナーには相続権がないため、遺言で自宅を遺贈したとしても、パートナーが亡くなった後は実子に引き継がれる保証がありません。また、パートナーが自宅を売却してしまう可能性もあり、どのような方法で両方の希望を実現できるか分からず、弁護士法人エミリアにご相談いただきました。
相談する前に感じていた不安や心配
最も大きな不安は、「パートナーと実子、どちらかしか守れないのではないか」という心配でした。パートナーに自宅を遺贈すれば実子への承継が難しくなり、実子に相続させればパートナーの住む場所がなくなってしまう。この二つの願いを同時に叶えることは不可能なのではないかと考えていました。
また、遺言書の限界についても不安を感じていました。一般的な遺言書では「誰に何を相続させる」ということは決められても、「その後どうするか」まではコントロールできないことを薄々感じていたからです。
さらに、パートナーとの関係が法的に不安定であることも心配でした。入籍していないため相続権がなく、何も対策をしなければパートナーは住む場所を失ってしまう可能性があり、一方で何らかの対策をした場合に実子の権利が守られるのかという不安もありました。
解決に至るまでのプロセスで印象に残っていること
森上弁護士から「家族信託」という制度について説明を受けた時の驚きが最も印象に残っています。「遺言では一代限りの承継しかできないが、信託なら二段階、三段階の承継を予め設定できる」という説明を聞いた時、まさに求めていた解決策だと感じました。具体的には、信託の仕組みとして以下のような設計を提案していただきました:
依頼者(委託者)が自宅不動産を信託財産として設定
依頼者の生前はご自身が受益者として自宅に居住
依頼者が亡くなった後は、パートナーが受益者として居住権を取得
パートナーが亡くなった後は、実子が受益者として不動産を取得
この仕組みにより、「パートナーの居住の安定」と「実子への最終的な承継」の両方が実現できることを理解した時の安堵感は忘れられません。
信託契約書の作成過程では、将来起こりうる様々なケースを想定した細かな条項を盛り込んでいただき、専門家の知識と経験の深さを実感しました。
これから相談を考えている方へのメッセージ
複雑な家族関係だからこそ、専門的な制度の活用が必要です。私も最初は「遺言書を書けば何とかなる」と思っていましたが、実際には遺言書だけでは解決できない問題がたくさんありました。家族信託は比較的新しい制度ですが、従来の相続対策では実現できなかった柔軟な財産承継が可能になります。「こんなことできるはずがない」と諦める前に、まずは専門家に相談してみてください。
特に、再婚や事実婚の方、複雑な家族関係をお持ちの方には、家族信託は非常に有効な選択肢となります。従来の方法では「どちらかを諦める」しかなかった状況でも、新しい解決策が見つかる可能性があります。また、早めの相談が重要です。家族信託は契約なので、認知症になってからでは設定できません。元気なうちに、将来への備えを整えることをお勧めします。専門家と一緒に考えることで、きっと最適な解決策が見つかります。一人で悩まず、まずは相談してみてください。

Comments
担当弁護士のコメント
弁護士法人エミリア代表の森上未紗です。
本件は、現代の多様な家族形態における相続問題を象徴するケースでした。再婚、事実婚、ステップファミリーなど、従来の法制度では十分に対応できない家族関係が増加している中で、家族信託はこうした課題を解決する有効な手段となります。
従来の遺言による対策の限界を痛感するケースでもありました。遺言書では「一次相続」しか指定できないため、「パートナーに遺贈した後、実子に承継させる」ということは原則として実現できません。しかし、家族信託なら「二段階承継」「三段階承継」も可能で、より複雑な家族の希望に応えることができます。
森上 未紗 弁護士
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